様々な現象は微分方程式を用いてモデル化され、その解がどのように振る舞うかを調べることで我々は現象を理解することができる。微分方程式の解を調べる際には、求積法で直接的に厳密な解を求めることもあるし、通常はそれが難しいので計算機で数値解を求めたりすることもある。いずれにせよ、微分積分学や線形代数学の技術を駆使してその現象を調べることになる。例えば、熱方程式は空間内の温度分布がどのように時間変化するかを記述する偏微分方程式である。1次元であれば、まっすぐな針金における熱の拡がり方を記述する。2次元なら平らな鉄板上の熱の振る舞いを想像すればよいし、3次元では我々の周りの空間での熱の拡がり方を想像すればよい。
では、球体状のものの表面では熱はどのように拡散していくのだろうか。より一般のぐにゃぐにゃした曲面や曲がった空間ではどうだろうか。少し考えると、そもそも曲がった空間でどのように微分積分を行ったらよいのかという疑問にたどり着く。そんなとき必要になる概念が「多様体」である。この授業では、球面やトーラス、射影空間などを題材として多様体の基礎を学ぶ。そして、曲がった空間における微分や積分のやり方を知ることがこの授業の目的である。
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