タイトル
2025 年度 前期
創成科学研究科(博士前期課程)  
日英区分: 日本語
現象数理解析特論
Advanced Mathematical Analysis and Natural Phenomena
前期
時間割コード 科目分野 昼夜
A5M7070    
ナンバリング 選必区分
MASC6110JSMS 選択
シラバス用カリキュラム関連 実務経験のある教員による授業
   
授業形態 メディア授業 単位数 曜日・講時
  2 水3~4
担当教員(ローマ字表記) 対象学生
國川 慶太 [KUNIKAWA KEITA]
数理科学コース
授業のタイプ(英語科目)  
 
授業の目的
トポロジーとは連続変形で変わらない図形の性質を調べる数学の一分野です。トポロジー的な問題の起源はオイラーによる「ケーニヒスベルクの橋」とされています。これは、ケーニヒスベルクという街の川にかかる7つの橋をちょうど一度ずつ渡る散歩ができるかという問題であり、橋と陸地の「つながり方」のみが重要です。橋の位置、角度、長さなどが多少ずれてもこの問題の解答には影響がありません。

オイラー以降、ポアンカレにより基本群やホモロジー群といった図形のある種の「穴」を捉えるための道具が開発され、トポロジーは大きく発展してきました。トポロジーは純粋数学的側面も強い分野ですが、一方で非常に広い汎用性もあり、使い方次第では私たちの日常生活の中の素朴な疑問に答えるための強力なツールとなってくれます。例えば、ボルスク-ウラムの定理は、地球上で「どんな時刻においても、同じ気温、同じ気圧であるような対蹠点が存在する」ことを数学的に保証してくれます。対蹠点とは互いに地球の真反対となる地点の組のことです(北極と南極や、日本とブラジルなど)。この定理の証明では基本群が用いられます。他にも、ハム・サンドイッチ定理というものがあり、これは「パンとハムとバターを3層に積み重ねたサンドイッチをナイフにより1切りで正確に各層を等分できる」ことを主張するものです。この定理もやはり基本群を用いて証明されます。基本群はこれらの定理を示すために開発されたわけではなく、純粋数学的な興味から生まれた概念と思われますが、それが身近な現象における疑問を解決してくれるのは興味深いことです。

この授業では、基本群の基礎的事項を学び、応用として、例えば上述のボルスク-ウラムの定理のような物理的解釈についての説明を行います。最終的には、具体的な空間の基本群を求められるようになることをこの授業の目的とします。
授業の概要
まずは位相空間の復習から始めます。基本群を定義するために最低限の知識を紹介した後、基本群を定義しその性質を調べていきます。あまり触れることはできないかもしれませんが、幾何学の土台である多様体についても紹介し、最終的には具体的な位相空間、特に多様体の基本群を求められるように計算方法を学んでいきます。

授業は講義形式で行います。授業中の演習は時間の都合上ほとんどできませんので、課題レポート等で演習量を補う予定です。
キーワード
トポロジー、位相空間、多様体、基本群
先行/科目  
 
関連/科目  
 
到達目標
1.基本群の幾何学的な意味を理解できる
2.基本群の性質を理解し、使いこなすことができる
3.具体的な位相空間や多様体の基本群を計算できるようになる
授業の計画
授業の内容は学生の理解度に応じ適宜その内容および進度に変更を加える。以下は授業計画の一例である。

第1回:位相空間、連続写像、同相写像
第2回:いろいろな位相空間
第3回:コンパクト性とハウスドルフ性
第4回:連結性と弧状連結性
第5回:道とホモトピー
第6回:基本群
第7回:基本群と連続写像
第8回:円周の基本群
第9回:ホモトピー同値と基本群
第10回:円周の基本群の応用
第11回:球面の基本群
第12回:閉曲面の基本群
第13回:ザイフェルト-ファン・カンペンの定理を用いた基本群の計算
第14回:ザイフェルト-ファン・カンペンの定理の証明
第15回:総括
教科書  
教科書1 ISBN
書名
著者名 出版社 出版年
備考 教科書は指定しないが,毎回事前に資料を配布する(manaba)。
 
参考書
参考書1 ISBN 9784130620598
書名 トポロジー入門
著者名 クゼ・コスニオフスキ 著、加藤十吉 編訳 出版社 東京大学出版会 出版年 1983
備考
参考書2 ISBN 9784764960183
書名 代数トポロジーの基礎
著者名 和久井道久 著 出版社 近代科学社 出版年 2021
備考
教科書・参考書に関する補足情報

成績評価方法・基準
小レポートや質疑応答による授業への取り組み(平常点)40%、期末試験もしくはレポート60%とし、総合的に評価する。単位取得の条件は合計が60%以上であること。
再試験の有無
有。ただし、期末試験やレポートの提出状況等を総合的に判断し、妥当と認められる場合に限る。
受講者へのメッセージ
授業の内容は学生の理解度に応じ適宜その内容および進度に変更を加える。
WEBページ
学生用連絡先
匿名アクセスではこの情報は閲覧できません。
学生開示用メールアドレス
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オフィスアワー
水曜日14:30-16:00 総合科学部1号館2S22
オンラインオフィスアワー
実務経験
備考
準備学修に必要な時間の目安等
大学の講義は、1単位を修得するにあたり、教員が行う授業時間に加え、学生が予習や復習などの授業時間外に学修する時間と合わせて、45時間の学修を必要とします。
 
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